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webadm | 投稿日時: 2012-9-30 23:21 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
分布定数回路の定常現象演習問題 さて分布定数回路の定常現象の演習問題にとりかかろう。
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webadm | 投稿日時: 2012-9-30 23:34 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
波長と位相定数 最初は波長と位相定数の理解を確かめる問題。
線路上の電圧が光速C0=3×10^8[m/s]で伝搬するとき、f1=100[Hz],f2=200[MHz]の周波数に対する波長と位相定数はそれぞれいくらか。 というもの。 著者は理論の時に波長λを説明もなしに使っているのに、最初に波長の問題が出るとは困ったものである。 伝送路では波長は以下の定義となる ここでvは位相速度、fは周波数である。題意から位相速度は光速と同じということなので、 ということになる。 一方位相定数と波長の関係は で表されることから ということになる。 低周波では線路長が長くても線路端間の位相差は無視できるので集中定数回路とみなせるが、高周波ではそうではないため分布定数回路として意識する必要があるということである。 |
webadm | 投稿日時: 2012-10-1 0:36 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
直列インピーダンス、並列アドミッタンス、特性インピーダンス、伝搬定数 次は直列インピーダンス、並列アドミッタンス、特性インピーダンス、伝搬定数の理解を確かめる問題
線路定数がR=0.09[Ω/km]、L=0.66[mH/km]、C=0.0044[μF/km]、G=0なるとき、周波数f=100[Hz]における直列インピーダンスZ、並列アドミッタンスY、特性インピーダンスZ0および伝搬定数γを求めよ。 というもの。 著者は最初に分布定数線路モデルの図で間違いを犯していて、直列インピーダンスの概念が理解不能にしているのに、直列インピーダンスの問題を出すとは困ったものである。といってもこの問題はずっと昔からある良く知られた問題文である。古い本だと周波数が商用電源の50Hzとなっているが、著者は100Hzに変えている。 もういちど分布定数回路の線路モデルを思い出そう 分布定数回路を逆L字形の微少な長さδの4端子対回路が無数に縦続接続されたものと考えると。R,L,G,Cは単位長さ当たりの抵抗、インダクタンス、コンダクタンス、キャパシタンス。従って単位長さ当たりの直列インピーダンスZ及び並列コンダクタンスY、特性インピーダンスZ0それに伝搬定数γは以下の定義となる これに題意の定数を代入するとそれぞれ ということになる。 同じ問題を例題としてあげている古い電気回路のテキストや著者の解を見るとどうやらフェーザー法で表すのが普通らしい。現在は複素数で計算できる電卓があるが、ちょっと昔は無かったからフェーザー表記が普通だったのだった。 ということになる。 フェーザー法で開平する場合にはベクトルの回転が半分になるので偏角は1/2することになる。それにしても面倒だ。 細かい文字が見えにくくなっているところに、問題文の数字が印刷上掠れてしまっているため0.66とあるのを0.65と読み誤っていた。最初誤植かと思ったけど、ルーペで拡大してよくよくみたら0.66だった...orz。数字は大きな文字にしたほうが良い気がする。 著者は依然として有効数字がばらばらである点に注意。 P.S 複素数の平方根を計算するのは大変である。Maximaを使うと簡単だが、手計算による方法は読者の課題としよう( ´∀`) |
webadm | 投稿日時: 2012-10-1 7:06 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
減衰定数、位相定数の近似式 次は減衰定数と位相定数に関する問題。
なにげに近似式を求める古くて新しい問題。ちょっと頭を使う。 その昔電卓も電子計算機も無かった頃に関数の値を計算するのは並大抵の苦労ではなかった。なので少ない労力で有る程度近い値を得る近似式というのを考えるのに時間を費やす価値があった。 今でも代数的に解けない(既存の解析関数で解が表せない)微分方程式の問題に関しては数値解法が必須であり、その近似計算が重要課題である。 伝搬定数γ、減衰定数α、位相定数βは線路の単位長さ当たりの直列インピーダンスZと並列アドミッタンスYによって ということになる。 問題文では(1)R≪ωL,G≪ωCと(2)ωL≪R,ωC≪Gの2つのケースについて減衰定数、位相定数の近似式を示せというもの。 当然ながら著者とは別解でやることになる。 直列インピーダンスZ,並列アドミッタンスYそれにそれらの積のベクトルZYおよびその平方根ベクトル√ZYの関係を図で表すと ということになる。 ベクトルZとベクトルYを乗じれば、ZはYの偏角分時計回りに回転するので、ベクトルZYの偏角はベクトルZとベクトルYの和になる。一方その平方根のベクトル√ZYは、二乗するとベクトルZYになるのだから、偏角はベクトルZYの1/2ということになる。ベクトルの長さはベクトルZYの長さの平方根とということになる。つまりγの偏角はZとYの偏角の平均値ということになる。これらを式で表すと ということになる。あとはこれをうまく題意の条件を利用して近似式を求めればよいことになる。 (1)R≪ωL,G≪ωCの場合 θ1,θ2ともにπ/2に近いことから ということになる。著者の解とは異なりβに二次の項を含んでいないが十分小さい値の差の二次式であることから無視できる。 手元にあるドイツの理論電気学の教科書にこの近似が成り立つ理由が判りやすくグラフで説明されている。併せて提示されている近似式は上の結果と同じである。 (2)ωL≪R,ωC≪Gの場合 θ1,θ2ともに0に近いから ということになる。これも著者の解とはαに二次の項が含まれていない点が異なるが十分小さい値の差の二乗であるので無視できる。 P.S Google先生にお伺いしても近似式に関してはなかなかこれというのが無かったので著者とは違うアプローチを色々試しながら三角関数の公式を使う近似法に辿りついた。他の近似法を見つけるのは読者の課題としよう( ´∀`) |
webadm | 投稿日時: 2012-10-7 6:19 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
一様分布定数回路 次も難題だ
理論の時に分布定数回路のモデルでは単位長さ当たりの直列インピーダンスと並列アドミッタンスは送電端からの距離に関わらず一定である場合を学んだ。 しかしこの問題ではそれらが送電端からの距離によって連続的に変化する一様分布定数回路を扱う。 どうすんだこれ(´Д`;) 分布定数回路は一様分布定数回路の特別な場合と考えることができるので一様分布定数回路は分布定数回路をより一般化した概念と考えることができる。 直列インピーダンスZおよび並列アドミッタンスYが送電端からの距離xの関数としてZ=Z0 exp(ax), Y=Y0 exp(-ax)で与えられるとき、電圧、電流はどうなるか。ただしZ0,Y0およびaは定数である。 というもの。 この種の問題はあまりみかけないが、元ネタは手元にあるドイツの理論電気学の教科書であることは確かだ。しかし著者はそこに提示してあるのとは別の定式化を行っている。やはり丸写しは避けたかったのだろう。 ドイツの教科書の内容は最後に紹介するとして、ここでも著者と別解でアプローチしなければならない。 最初にまず理論に立ち戻る必要がある。 図の分布定数回路の微少区間dxに関して以下の関係が成り立つことは既に学んだ通り ここでR,L,G,Cはそれぞれ単位長さ(km)当たりの線路の直列抵抗、直列インダクタンス、並列コンダクタンス、並列キャパシタンスの値で、定数であると見なしていた。 問題では直列インピーダンスZ,並列アドミッタンスYもそれぞれ送信端からの距離xの関数になることから ということになる。 これを更に両辺をxで微分すると これに元の関係式を代入すると ということで面倒な指数関数が消滅した。というよりは予め意図してそういう問題設定になっていると言った方が良いだろう。一般的に見ればこれは特殊な一例に過ぎない。最初の指数関数が残っている状態の連立微分方程式を解こうとするとどうしても解けない。色々探してもそのケースを例題としてあげているテキストは見あたらないので、華麗にスルーしているとしか考えられない。 最後の指数関数を消去した微分方程式を解くと ということになる。 著者とは電流の式が異なっているが、電流の式の導出が基本方程式と電圧の式から求めている点で積分定数が電圧の式のものが派生してきている。 さて元ネタの披露だが、良くみたら問題設定が微妙に違っているものの、指数関数が定数項に含まれるという点では一緒である。以前から紹介しているドイツの理論電気学の教科書からそのページを下に示す。そこでは無損失線路が前提となっているが、先の問題ではそのことについてはなんも触れられていないし、Z0,Y0が定数とだけあって複素数なのか実数なのかも触れていない。本当は無損失線路を前提としているのではないかと勘ぐるのである。そうすると大分様相が異なることになる。 無損失線路なのでR,Gは基本方程式から消失し線路はリアクタンス分だけになる。LCは位相速度の二乗の逆数で定数であるとしている。そこにLが距離の指数関数に比例して変化するとしている。そうすると問題と良く似た微分方程式が導かれる。最終的には同じような電圧の式が導かれている。電流の式は著者と同様に先に求めた電圧の式と基本方程式から導いている。これは元ネタと思える根拠である。 元ネタでは無損失線路なので、γが実数になるか純虚数になるかの2ケースがある。それについての議論が生じないように問題文では無損失線路であるともそうでないとも言っていない。本当はそうした議論が無いとこの問題の本来の意図がはぐれてしまうように思える。 無損失線路かそうでないかによってどのような違いが現れるか確認するのは読者の課題としよう( ´∀`) |
webadm | 投稿日時: 2012-10-9 2:16 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
低損失線路 次も理論的な問題。
特性インピーダンスが純抵抗の低損失線路の任意の点から負荷に供給される電力Paはその点における入射波と反射波の電力差に等しいことを証明せよ。 というもの。 なんとなく当たり前の理屈に見えるが、証明はどうすんだこれ(´Д`;) またしても基本に立ち戻ろう 伝送路の任意の点xにおける電圧と電流は入射波と反射波の合成で表されることを理論で学んだ 従って、任意の位置xに供給される有効電力は ということになる。これだけでも十分である。 念のため一方入射波と反射波の有効電力をそれぞれ求めると 従って となり、Piは入射波の電力で、Prはそれと逆方向に伝搬する反射波の電力であるからして、位置xから負荷方向へ供給される電力は入射波の電力と反射波の電力の差分ということになる。Z0は実数であるからこれでよい。そうでない場合はもっとややこしくなる。出題者は問題を予め易しくしてある。 交流回路の定常解析で学んだ有効電力に関する公式を思い出す必要があったことだけは確かだ。それを忘れていてもベクトルの内積とか線型代数の基本を憶えていればすぐである。あと複素共役ね。 Z0が一般の複素数の場合にどうなるかについては読者の課題としよう( ´∀`) |
webadm | 投稿日時: 2012-10-10 6:05 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
基礎方程式:受電端電圧ER、電流IRを与えた場合 これは理論の時に既に解いてしまったので詳しくはそちらを参照願うことにしよう。
受電端電圧ER,電流IRをあたえたとき任意の点xにおける電圧、電流が以下の式で与えられることを示せ。 |
webadm | 投稿日時: 2012-10-10 6:34 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
基礎方程式:受電端負荷ZR,送電端電流IRを与えた場合 これは著者が理論で触れなかった基礎方程式を導く問題
特性インピーダンスZ0、伝搬定数γ、長さlなる線路の受電端に負荷ZRを接続し、送電端に電流源IRを接続した。電源からの距離xの点における電圧、電流を求めよ。 というもの。 これも分布定数回路の定常解析の基礎方程式 の特殊な例である。 これにはまず未定積分定数A,Bを定める必要がある。 送電端の電流はISは与えられているが受電端に関してはZRで終端されているとしか与えられていない。理論の時に送電端の電流ISと受電端の電流IRが条件として与えられた例について解いているが、この問題では送電端電流ISと負荷インピーダンスZRが代わりに与えられている。どんすんだこれ(;´Д`) 伝送路を二端子対回路として見ると 以下の関係が成り立つ これをVSとIRに関して解くと ということになる。 これで送電端と受電端の端子対条件が定まったので、どちらかを先の基本方程式に代入して未定積分定数について解けばよいことになる。 受電端の条件VS,ISを使ってA,Bを解くと ということになる。これを初めの基礎方程式に代入すると ということになる。 線型代数と双曲線関数の加法定理を思い出せばたいしたことはない。 送電端ではなく受電端の条件を使って導くのは読者の課題としよう( ´∀`) P.S この問題を後で見直すと、最初の図を位置xで真っ二つに切断すると、右と左とでそれぞれ独立した二端子対回路を構成しているのがわかる。このことを利用すれば、もっと簡単に解けるはずであるが、それは読者の課題としよう( ´∀`) |
webadm | 投稿日時: 2012-10-13 9:18 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
特性インピーダンス 次は特性インピーダンスに関する問題
直列インピーダンスZ=R+jωL、並列アドミッタンスY=G+jωCの線路l[km]がある。この受電端には特性インピーダンスに等しい負荷インピーダンスZ0を接続するとき、線路上の任意の点より受電端を見たインピーダンスは常に特性インピーダンスに等しいことを証明せよ。 というもの。 これは前問で宿題とした線路を二分割するアイデアが使えそうである。 この図はどっかで見覚えがある。そう二端子対回路で学んだBartlettの二等分定理の時だ。厳密には異なるが、集中定数回路と違って分布定数回路では線路が均一ならどこで分割してもいいことになる(金太郎飴)。 以下が成り立つことを証明すればよいことになる。 右半分の二端子対回路に関して以下の関係が成り立つ 従って ということになる。 証明終わり。 なんだ簡単じゃないか( ´∀`) 元の二端子対回路と、左半分の二端子対回路に関する関係式からも同じ結果が得られる。それを確かめるのは読者の課題としよう( ´∀`) P.S 題意にある直列インピーダンスZや並列アドミッタンスYは線路の位置によらず均一であるという条件を与えている。従って一般的に分布定数回路では線路が均一である限り、特性インピーダンスで終端すれば線路のどの点から見ても終端方向のインピーダンスは特性インピーダンスと等しいということになる。同軸ケーブルとかはこの原理を利用している。あくまで特性インピーダンス(通常は抵抗終端できるように特性インピーダンスが実数値になるように線路定数が予め設計されている)で終端することが前提である。現実にはコネクタとかその他の配線部分でインピーダンスミスマッチがどうしても生じる。それを最小限にするのが設計者の責務となる。 |
webadm | 投稿日時: 2012-10-13 18:08 |
Webmaster 登録日: 2004-11-7 居住地: 投稿: 3107 |
続:特性インピーダンス 前問の続き
前問の線路に負荷インピーダンスZRを接続した場合、送電端からみたインピーダンスはどのようになるか というもの。 前問とは異なり、今度は送電端からみた駆動点インピーダンスZSを導く必要がある。 これも線路を二端子対回路として見ると以下の関係が成り立つ 従ってZSは ということになる。一応これでZSは既知の値で表された。 著者は更に式を操作して簡略な定式化をしているが、はてどうしたものか。 前問にあるとおり線路の直列インピーダンスZ、並列アドミッタンスYはいずれも複素数であるので、特性インピーダンスZ0、伝搬定数γいずれも複素数である。負荷インピーダンスZRも一般には複素数であるからこれ以上式を簡略化しても、それらが実数であるような特殊なケースでしか意味がない。それは元々の題意とはまったく別である。 ということで、更なる簡略な式については著者の解答を見ていただこう。 著者の式でZR,Z0それにγが複素数の場合についての考察は読者の課題としよう( ´∀`) |
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