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投稿者 スレッド
webadm
投稿日時: 2013-5-11 21:03
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登録日: 2004-11-7
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投稿: 3107
分布定数回路の過渡現象演習問題
いよいよ最後の章の演習問題に取り組むことにしよう。
webadm
投稿日時: 2013-5-12 20:14
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
波動方程式
最初は波動方程式を解くことから

次の2階線型偏微分放映式を波動方程式という。この方程式を解き、その結果を用いて無損失線路の電圧、電流分布の一般解を求めよ。



というもの。

学校でも物理で波動方程式を解く講義を必ず受けるが、これも実は電信方程式の特殊なケースにすぎず、歴史的に早い時期に解くことができた易しい問題。

最初から電信方程式に取り組むと全てのケースを解くのに20年とかかかった人も居るぐらいだから。一番単純なケースだけやってお茶を濁すというぐらいしか学校では無理だからだ。

波動方程式の一般解はd'Alembertが最初に導いたことでd'Alembertの解として知られているが、d'Alembertの方法はなぞるのと長いので、今日的にはそれ以外の色々な簡潔な導出方法があって、そちらを使ってd'Alembertの解を得るのが普通だ。

ここでは著者の解とも市販の物理数学のテキストにも無いHeavisideの演算子法をつかって同じ結果を得てみることにする。

いずれの方法でも時間と距離それぞれに関して常微分方程式を解くだけである。

問題の偏微分方程式を以下の用に作用素方程式に書き直す



次に時間で2重積分して初期条件を与えるポテンシャル項を出現させる



これをeに関して時間、距離に関して順番に演算子法で解くと



ということになる。これがd'Alembertの解である。e1,e2は初期条件によって決まる任意の距離と時間に依存する一価関数であり、互いに時間とともに速度vで空間座標軸を逆方向に移動することがわかる。

さて題意では電流分布についての一般解も求めている。

電流分布に関しても電信方程式はまったく同じだから、



と表される。

これらの電圧分布と電流分布の一般解を電信方程式の基礎方程式に代入すると



題意では無損失線路の場合なので、R=G=0としてよく



ここでvは、無損失線路での波の伝搬速度なので



を代入すると



また無損失線路の特性インピーダンスZ0は



であることから、



という関係が成り立つ。

第二式の両辺にZ0を乗じて、項を消去すると



両辺を積分して、変数変換を元に戻すと



という結果が得られる。これを元の電流分布の式に代入すると



ということになる。

著者はこの関係を一言で済ませているが、それだともやもやして納得いかないという場合に几帳面に示すとこうことになる。

こうやって常々基礎計算力を磨いておくとぼけ防止になるし、普段仕事上でのリスクを予見する能力を維持することにもなるので技術者として実益もあり悪いことではない。

P.S

d'Alembertの解は2対あって、ひとつは上に上げたような時間を固定して空間軸上を見るのと、空間を固定して時間軸上の変化を見る場合である。後者の場合、e1(t-x/v),e2(t+x/v)のような2つの関数の和で表されることになる。

いずれにせよ波動方程式は宇宙空間のように無損失な媒体を波が伝わる一番簡単なケースなので、それ以外のケースになるといきなり難しくなることが想像に難くない。
webadm
投稿日時: 2013-5-18 21:57
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
無歪み線路
前問はよく考えたら無損失線路と題すべきだったかもしれない。

電信方程式の解の分類としては無損失線路が一番簡単で、次に少し一般化に近く、無損失線路のケースに近いのが無歪み線路。

無歪み線路の条件はHeavisideによってR/L=G/Cであることが提示された。これの有難味は、更に一般化した電信方程式の解と比べることによって明らかになるが、それはまた別の機会に。

無歪み線路の電圧、電流分布の一般式を導出せよ。

というもの。

電信方程式の基礎方程式から始めよう



これをHeavisideの演算子とベクトルで書き直すと



従って自明な解U=0以外の解が存在するには



が成り立つことが必要十分条件である。

ここで無損失線路の条件R/L=G/Cを適用すると



ということになる。

従って、解は以下の式を満足することになる



これを時間tで二重積分して空間に関するベクトルポテンシャル、K0,K1を出現させると



これをUに関して解くと



ということになる。

前問と同様に電流分布は電圧の進行波と反射波の重ね合わせの関係から



ということになる。

無歪み線路は無損失線路と同様に実数値の特性インピーダンスを持つことは以下に示す通り



P.S

著者は電分布の一般解を電信方程式に代入して前問のように電流分布の解を導いているが、そうしてもよい。

特性インピーダンスが実数値なのは無損失線路と無歪み線路だけで、それ以外の一般の線路では複素数になる(周波数特性がフラットでない)点だけは憶えておく必要がある。これが信号が遠くまで歪みなく届くには無損失線路(宇宙空間)か無歪み線路(同軸ケーブル)のどちらかでなければならない理由である。これが深刻な技術的な問題となったのは電話の時代になってからである。それ以降このことが常識と化した。

近代で身近なところではGHzのクロック周波数で動作する超LSI内の配線は必然的に半導体シリコン内で無歪み線路を形成する必要があるので、半導体ウェハー表面からどのくらい掘った(エッチングした)位置でその特性(R/L=G/C)が得られるか見極める必要がある。実際に回路をエッチングして特性を確認するわけだが、そう何度も試し掘りして試行錯誤的に見つけるわけにもいかない。事前に有る程度近い位置を解析的に求める必要がある。そこのところは半導体メーカーの超極秘のノウハウである。
webadm
投稿日時: 2013-5-19 4:19
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
無限長無損失線路
これまでの問題は初期値問題だったが、今度は境界値問題

無限長無損失線路の送電端にes(t)=Em e^-bt cosωtを加えるとき、任意の点xの電圧、電流はどうなるか。

というもの。

これも理論のときに直流電圧を加えた場合を解いてしまったが、今回は交流電圧を加えた場合となる。

無損失線路(R=G=0)の基礎方程式をHeavisideの演算子とベクトルで表すと



ということになる。

従って特性方程式は



ということになる。

これを距離で二重積分しベクトルポテンシャルを出現させると



これをUに関して解くと



また距離に関して解いただけの途中だが、この段階で距離に関して以下の境界条件を与えることができる。



ここでx0を送電端から十分遠い位置とする。

これを先の途中解に適用するとベクトルポテンシャルに関する連立方程式が得られる



第一式を第二式に代入してK0を解くと



ここでx0→∞とするとK0は



ということになる。

これらベクトルポテンシャルを途中解に代入して完全に解くと



ということになる。

著者は信号がまだ伝わっていない空間での解を書いていないが、著者の解は既に信号が伝わった以降の解である点を注意しておく。

Z0は無損失線路の特性インピーダンスで



である。

P.S

最後に残った時間推移演算子は時間に関する項に全て作用することに注意しなければならない。なので本来はベクトルポテンシャルK0,K1は最初の段階で演算子関数の右側に現れなければならない。順序交換すると誤った結果を導くことになる。Maximaを使うとそんなことは気にもとめてくれないので、勝手に演算順序を交換してしまうので注意。

時間推移演算子が最後に残ったが、それについては共立の「数学公式」のHeavisideの演算子の章には何故か見あたらない。

幸いにして手元にあるCourant & Hilbertの"Methods of Mathematical Physics"のheavisideの演算子法の解説の中に書いてある。p524に

引用:

5) A very important operator which is not rational, the exponential operator, is introduces for constant h by the definition




理論のところでこれが出てきた時に安易に"Taylorの定理により"と書いた憶えがあるが、それはHeaviside流のこじつけであって、Taylorの定理そのものは解析関数の近似級数展開で級数展開そのものが関数と同値であることを意味しているわけではない。

Courant & Hilbert本には先ほどの引用した直後に以下のように補足されている。

引用:

which is suggested by the Taylor series for exp(-hp) and f(t-h).
However, this plausibility consideration cannot provide a satisfactory justification, because the definition should not depend on the analytic character of the function f(t). Our definition is justified rather by the fact that it implies the relations

exp(-hp)exp(-kp)f(t)=exp(-(h+k)p)f(t)

and

(d/dh)exp(-hp)f(t)=-pexp(-hp)f(t)

the latter is equivalent to the equation

(d/dh)f(t-h)=-(d/dt)f(t-h).
webadm
投稿日時: 2013-5-19 23:57
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3107
無限長無歪み線路
次は境界値問題で、無限長無歪み線路に関するもの

無限長無歪み線路の送電端にes(t)=Em sinωtを加えるとき、任意の点xの電圧、電流はどうなるか。

というもの。

基礎方程式をHeavisideの演算子とベクトルで表すと



ということになる。

これの特性方程式は



従って無歪み線路(R/L=G/C)の場合



ということになる。

前問と同様に距離で二重積分してベクトルポテンシャルを出現させると



これをUに関して解くと



ここで以下の無限長線路の境界条件を与える



ここでx0は送電端より十分遠い距離とする。

これを途中の解に適用すると



第一式を第二式に代入してx0→∞とすると



ということになる。

これを途中解に代入して完全に解くと



ということになる。

これでも十分だが更に整理すると



であることから



としても良い。

ここで特性インピーダンスZ0は無歪み線路では実数値で



である。
webadm
投稿日時: 2013-5-20 6:55
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
無限長RC線路
これも理論の時にやってしまったが、境界値問題である


t=0で直流電圧Eを加えるとき無限長線路の電圧、電流分布はどうなるか。またE=1[V],R=3[Ω/km],C=0.2[uF/km]のときの電圧、電流を図示せよ。

というもの。

まずは電圧、電流の解を求める必要がある。

RC線路の基礎方程式をHeavisideの演算子とベクトルで表すと



ということになる。

これの特性方程式は



ということになる。

これは熱方程式である。

距離で2重積分してベクトルポテンシャル項を出現させると



これをUについて解くと



ということになる。

ここで以下の無限長線路の境界条件を与えると



第一式を第二式に代入してK0を解くと



これを途中解に代入して完全に解くと



ということになる。

RC線路の場合には線路が抵抗Rで直列に接続されているので、信号はすぐさま抵抗分圧でどんなに遠い受電端でも即時に伝わるという矛盾があるため、波が伝わらないという時空間が存在しない。

著者は定性的に電圧と電流の式を調べているが、面倒なのでMaximaでプロットしてしまおう。

電圧分布を時間と距離に関してプロットすると



電流分布を時間と距離に関してプロットすると



ということになる。

著者はついでに電流のピーク値を求める式を導出している。
webadm
投稿日時: 2013-5-20 9:24
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
損失のある無限長線路
次も境界値問題で、更に一般化した線路損失のあるケース

G=0の無限長線路にt=0で直流電圧Eをくわえたときの電圧、電流分布を求めよ。

というもの。

R>0、L>0、C>0、G=0の線路の基礎方程式をHeavisideの演算子とベクトルで表すと



ということになる。

これの特性方程式は



距離で二重積分してベクトルポテンシャルを出現させると



これをUに関して解くと



ということになる。

ここで以下の無限長線路の境界条件を与えると



第一式を第二式に代入してK0を解くと



ということになる。

これを途中解に代入して完全に解くと



ということになる。

I0,I1はそれぞれ変形Bessel関数である



ちなみに著者の最後の電圧分布の解は、距離xではなく時間tで微分するように記述されているなど間違っていることに注意。例え距離で微分したとしても得られる解は最初に与えた境界条件を満足しない。

それに本来なら電流分布の解を距離xで微分しなければならないが、それは(1/s)を全体に適用した後に行わなければならない。

著者はもしかして演算子法を知らないか、知っていてもMiksinskyや吉田の著書を読んだことがないのだろうと想像する。

さすがにこの解は電圧、電流分布の計算は要求していない。数値計算が難しいので著者も正解を出せないからだろう。これは読者の課題としよう( ´∀`)
webadm
投稿日時: 2013-5-21 7:38
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
続:無損失線路
次は再び無損失の問題

無損失線路の電圧、電流をつぎの初期条件のもとに解け。



というもの。

以前の問題の結果から解は以下の特性方程式を満足する。



これを例によって距離で二重積分してベクトルポテンシャルを出現させると



これをUについて解くと



従って題意の初期条件を与えると



これでベクトルポテンシャルK1は解けたが、K0がまだ残っている。

どうすんだこっから(´Д`;)

とりあえず代入して整理してみると



ということになる。

さていやなことに未定積分項K0が残ってしまった。

K0を決定するにはx≠0での境界条件が必要になる。

ここでどうして著者は未定項を含まない解を得ているのか謎である。境界条件がx=0に関してだけならどうしても完全には解けないはずである。
著者の解を見ると、予めe(x,0)=i(x,0)=e'(x,0)=i'(x,0)=0という条件で導いたLaplace変換の結果を用いている。つまり題意以外の初期条件があるのである。これは明らかに詐欺だろう。この時点でもうまじめに解く気が失せてしまった。

著者の隠していた初期条件を用いて著者と同じ結果が得られるかどうか確認するのは読者の課題としよう( ´∀`)

問題文でのみ与えられたx=0の初期条件を満足するならK0は任意に決めてよいことになる。幸いにしてK0=0としても、題意の初期条件を満足するので、それを解とすることにする。K0≠0でx=0の初期条件を満足する解は無数にあると思われる。それを全部調べるわけにはいかない。

es(t)=sin(t),L=C=1としてプロットすると



ということになる。

これはwave equationで画像検索すると似たようなグラフが出てくるが、時空境界線より先には波はまだ届いてない領域があるので、そこは平坦ではければならないが、そうなってないものがほとんどである。

どんぶらこっこどんぶらこっこと1/2振幅の2つの波が重なって進んでいく様子がよくわかる。

学生時代はコンピューターとか教室になかったから、黒板の上で数式から波を想像するしかなかったが、よほどの想像力豊かか数学の天才でないかぎり、このグラフを思い浮かべるのは無理だろう。やさしい時代になった。

P.S

最初に送電端(x=0)での電圧と電流は一次独立ではないと思ったが、良く考えると送電端に反射波が到達している場合には、電圧と電流は一次独立となる。これは送電端の終端条件にもよるが、すくなくとも反射波の電圧が加わった時点で終端回路に電流が流れ、それは送電端に加わる電圧によって流れる電流を打ち消したり増大させることになる。そうすると必ずしも送電端の電圧と電流が一次独立ではないとは言えない。

もっと良く考えれば、無限に長い線路の途中の任意の点を送電端としても問題としては成り立つ。x=0と定めた線路上からxが増大する方向は線路定数が均一だとすればよい。逆にx<0の空間に線路があってもよいし、実際の電源が印可されているのはずっと手前でもよいし、x=0より手前の線路の特性はどうなっていても構わないということになる。

問題は長い線路上のx=0とした点からx>0の均一な特性の線路上の電圧と電流である。

演算子法で導出した途中解を更に無理矢理完全に特と、第二項は積分項になることが想像に難くない。1/pの演算子関数があるので時間に関する積分になるのである。同時にexp(±x√LCq)演算子関数があるので、時間シフトが作用することも予想される。これらを総合すると、解は一次元のStokesの定理(特殊な場合のGreenの定理やGaussの定理を一般化したもの)に対応することが予想される。StokesというとWillam Thomsonの終生の友人で数学者だが、その業績を学ぶ機会は普通の人はまずない。でもHeavisideの演算子法を操ると意識するしないに関わらずその結果が見え隠れするのは実に興味深い。
webadm
投稿日時: 2013-5-24 15:12
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
続:無歪み線路
次は前問の無歪み線路バージョン

無歪み線路の電圧、電流を次ぎの初期条件のもとに解け。



まじめに解こうかどうしようか悩むところ。

無歪み線路の基礎方程式をHeavisideの演算子とベクトルで表すと



これの特性方程式は



例によって距離xで二重積分してベクトルポテンシャルを出現させると



これをUについて解くと



ということになる。

これにx=0での初期条件を適用すると



とK1が決まる。

これを元の途中解に代入すると



ということになる。

境界条件がもうひとつ与えられないとK0が決定できないが。これで解けないと投げ出すのは早い。K0=0の場合の解は確かに与えられた初期条件を満足する。しかしK0≠0の解が存在する可能性が依然として残る。

これはいわばDiophantus方程式を実数領域に拡張したような問題で、与えられたx=0の初期条件を満たすK0がひつと以上存在することは明らかである。K0≠0の解が有限個なのかそれとも無数に存在するかは現時点ではわからない。またその解を全てプロットすることもできない。

著者はいかにも問題文から完全な解を導いてみせているが、それは予めe(x,0)=i(x,0)=e'(x,0)=i'(x,0)=0という初期条件を与えて導いたLaplace変換の結果を用いているためである。だったらその条件を問題文に含めないと詐欺だろう。暗黙の条件としてそれが常識だというならこちらの完敗というしかない。

著者の暗黙の初期条件を使って完全な解を導くのは読者の課題としよう( ´∀`)

Heavisideの演算子法でさえ、無数の他の解の存在を示している。Laplace変換ではそれがまったく示すことができないのだと思ってしまう。

無損失線路の場合は送電端での源信号がそのまま空間を伝わるのに対して無歪み線路の場合は、進行波は遠くに行くにつれ減衰し、逆に反射波は送電端に近づくほど減衰し、遠ざかるほど増大する。無限長線路の場合受電端の条件を与えない限り、送電端から遠ざかるほど無限に増大する源信号と同じ形の反射波が解の中に含まれる。

K0=0とした解が題意で与えられた初期条件を満たすことから、解であることは明らかである。

従って解は




ちなみに著者の解には誤植があるので注意しておく。Laplace変換だと無限長線路の解しか得られないことになる(送電端から距離が遠ざかるほど信号が減衰していく)。Laplace変換は積分変換なので、右半平面上での積分が収束しないと扱えない。なので無限遠点に近づくほど値が小さくなる解しか扱えないわけである。解がたったそれだけではないことは明らかである。

eS(t)=sin(t),L=C=G=B=1としてプロットすると(ただし縦軸範囲を-1〜1に制限)



ということになる。

これでわかるのはx=0のプロットが題意で与えられた通り源信号eS(t)そのものであることからこれが解であることは確かである。

しかし、無限に距離と共に増大する反射波との合成のため、xが増大するとともに振幅が増大していくという現実にはあり得ないかもしれない解となっている。もしかしたら宇宙はこんな式で表されるのかもしれない、遠く離れるほど増大していくし。

いや現実に存在する、Tesla Coilがそれだ。Tesla Coilは1次コイルで励起された二次コイルの送電端からずっと離れた受電端にだけ大気の絶縁破壊を起こす程の大電圧が発生する不思議なあれである。ひょっとしてNikola Teslaはこの解の存在を知ってTesla Coilを思いついたのかもしれない。普通に行儀のよい解き方をするとこの解は得られない。もしかしたらNikola TeslaもHeavisideの演算子法を使ったのかもしれない。

もっと縦軸の範囲を広くして巨視的な観点で解を眺めると全容が見えてくる。

縦軸のスケールを制限しないと、送電点側は受電端側に比べると振幅が借り着無く小さくほとんど無視できる電圧しか発生していない。線路14m長のところで送電端に給電される電圧の200万倍近い高電圧が発生している。Tesla Towerが完成していればそれ以上の規模だったかもしれない。もっともこれはL,Cがあり得ない程超高透磁率、超高誘電率の線路を使った場合の極端な例だが。実際に利用可能な線路を使って計算してみるのは読者の課題としよう( ´∀`)



以降の問題でちゃんと送電端と受電端の境界条件を与える問題が登場することを期待する。

P.S

著者と同じ解は得られなかったけれども、Tesla Coilの解を偶然に見つけてしまった。怪我の功名である。

Tesla Coilは明らかにここで見いだした解によって送電端から離れれば離れるほど電圧振幅が大きくなる定在波を生じる分布定数回路であることは確か。単純に巻き線比を極端に大きくした感応コイルではない。感応コイルは密結合トランスなので、二次側の両端子間に高電圧が発生する。Tesla Coilはそれとはまったく異なり、送電端は送電電圧以上発生せず、送電端から離れれば離れるほど高い電圧が発生するという不思議な性質も、この解によって説明される。

学校でこの解を教えないのは、きっと第二のNikola Teslaを生み出さないようにするために意図的に仕組んだカリキュラムだからかもしれない。とにかく初期状態が線路の電圧と電流が全て0にしてしまえば、絶対にTesla Coilの解は出てこない。

それと計算を簡単にするために,L=C=R=ω=1としたが、これもTesla Coilの解に必要な共振条件を満たす。計算機のなかった時代Nikola Tesraもきっとそうやって試し算をしてみたら、想定外のモンスター解が現れてびっくりしたかもしれない。これは実際に作って試すしかないと思ったに違いない。

いや〜電気ってほんと面白いですね。

Tesla Coilをまだ知らない諸君は、Googleで画像検索してみたまえ。絶対魅了されるはずだ。芥川龍之介も「歯車」で青い閃光になりたいと夢見たと書いてある。
webadm
投稿日時: 2013-6-8 20:35
Webmaster
登録日: 2004-11-7
居住地:
投稿: 3107
続々:無損失線路
次はようやく有限長の線路の問題

受電端を開放にした長さlの無損失線路にt=0で直流電圧Eを加えた。電圧、電流を求めよ。

というもの。

これは理論の時に最初に考えたモデル。

線路は無損失なのだから線路上で電力が消費されることがなく、加えられた信号は受電端の方へ一定の速度で伝わっていく。半無限長線路の場合には永遠に受電端に到達しないので無限の彼方まで信号が伝わっていくだけだった。

今度は有限長で線路の終端が存在し、信号の波はそこから先へは伝わることができず、かつ終端で電力が消費されるわけでもないので、行き場を失った波は反射率1で送電端の方へ逆戻りすると考えられる。それ以降は送電端から供給される進行波と受電端でUターンした反射波が線路上で重なっていき、それが送電端まで到達する。

送電端に到達した反射波は、それより先に伝わることができない。かつ線路は無損失なので、送電端で電力が消費されることもなく、終端条件によって進行波と同じ方向に逆戻りすることになる。

ということで波が送電端から受電端に届く所用時間間隔で線路上に行ったり来たりする反射波と進行波が重なり合う現象が発生することが予想される。

タイミングチャートで描くと



ということになる。

進行波は送電端に電圧Eが加えられている限り途切れることはないのと、反射波も進行波が途切れない限り途切れることなく発生する。それがUターン毎に時間遅れで重なり合うことになる。ことは簡単ではない。

さてこれを数式で表すことができるのだろうか? そこがこの問題の中心ということになる。

ストラテジーとしては

・電信方程式の基礎方程式から無損失線路の方程式を導出
・演算子法でx=0とx=lにおける境界条件を与えて方程式を解く

ということになるが、そう簡単にいかない予感がする。

題意では送電端に加えられた電圧と、受電端が開放されているということしか条件が与えられていない。前者は送電端の電圧条件を与え、後者は受電端の電流条件を与えるが、送電端の電流条件と受電端の電圧条件は与えられていない。

とりあえず基礎方程式からベクトルとHeaviside演算子を使った式を導出してみよう

無損失線路なので



ということになる。

これの特性方程式から



ということになる。

これを例によって距離で二重積分してUについて解くと



ということになる。

これをx=0とx=lにおける境界条件を与えると



ということになる。

ポテンシャルK0,K1は解けたが、K0の中に未知関数e(l,t),i(0,t)が現れてしまっている。

どうすんだこれ(´Д`;)

とりあえずK0,K1を途中解に代入して整理すると



ということになる。

この結果から判ることは線路の電圧分布が送信端の源信号Eと受電端の反射信号源e(l,t)のそれぞれの信号端からの距離と時間に依存すること、電流分布は受電端が開放のため常に受電端から反射する電流は0であるため送電端の電流と受電端からの距離と時間のみに依存するということである。

さてこれを実関数に変換するのはテクニックが要る。分子と分母の両方に時間シフト演算子があるからだ。

どうすんだこれ(´Д`;)

だんだんとどの本にも書いてない式が現れてくると、孤高の世界に足を踏み入れたことを感じる。後にも先にもここに足を踏みいれたのは自分しかいないのだと思うと心細くなる。Heavisideはこれを20年間耐えたばかりか、その結果を公表したばかりに大変な災難に巻き込まれることになったのだから、それに比べればまだましである。とにかく今は自分を信じるしかない。

上の式を指数関数に展開して整理すると



ということになる。

良くみるとHeavisideが導出した電信方程式の一般解に良く似ている。演算子法を使うと終端の2つの信号源から伝搬する信号に関する無限級数で表されることになる。これは著者の解とは大分見かけが違う。

またしてもHeavisideが歩んだ20年の小径を横切った感じがする。19世紀にHeavisideは確かにこの辺を通り過ぎたのだ。

上の解を最初に描いたジグザグ図に当てはめてみると。



ということになる。

これをグラフにプロットするのもやっかいである。

0<x<lとして、線路上の点xにおける電圧をプロットしてみると



ということになる。

線路は無損失なので、このパターンが延々に繰り返されることになる。

電流について同様にジグザグ図を描いてみると



i(0,0)=E/Z0として電流をプロットしてみると



ということになる。

解が再帰的にe(l,t)やi(0,t)を参照しているので時間を遡った境界点の電圧と電流値に依存する。時間と距離だけ与えられてぱっと計算するというわけにはいかず、最低でもt=0から1周期分は計算しておく必要がある。周期関数なので、



ということになる。

再帰的でない定式化は読者の課題としよう( ´∀`)

P.S

演算子法で解くと、式の上ではまるで時間軸を逆方向に移動する波があるようにも解釈できる。d'Alembertの解には二組あるというのを前にも書いたが、ひとつは空間上(x軸上)を移動する進行波と反射波、もう一組が時間軸上を移動する進行波と反射波の解である。19世紀には時間軸上を逆戻りする波などナンセンスとされたが、20世紀に入って量子力学によってそれは必須となった。
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