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webadm
投稿日時: 2007-3-29 7:17
Webmaster
登録日: 2004-11-7
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投稿: 3107
機械工作実習の思い出
先日久々にドリルで穴開けやヤスリがけをやってみて学生時代の機械工作実習を思い出した。

機械工学系は1年生の時からはじまった。工学棟と同じ面積のまさに機械実習工場には大型旋盤やフライス盤、鍛造エアハンマー、電気溶接機、鋳造用のキュポラとかなんでもそろっていた。それと実習を担当する指導教官はそれまでは国内の名の通った企業でそれぞれ名工だった人たちである。知識や技は日本の最高レベルにあったと思う。

それを順番に実習していくわけであるが、本物の工作機械だけにちょっと間違えば命に関わる事故につながりかねない。そういった話を聞きながらおっかなびっくり工作機械を手なずけていくわけである。中には完全に機械に翻弄される人も居る。

どれもおもしろかったけど、中でも私が得意だったのはアセチレン溶断。酸素とアセチレンガスを燃焼させた高温高圧のガスを鋼板に吹き付けて溶け出した鉄をガスで吹き飛ばしながらまるで切り絵のように自在な形に切断することができた。まるで経験はなかったが最初からうまかった。不思議である。小学生の頃に工作の材料が何もなく、プラモデルの代わりに新聞紙とかを切り抜いて型紙を作りそれで立体模型を作っていたのがよかったのかもしれない。

最終学年の時に自分達で立ち上げたサークルで必要な部品を作るのに再び機械工作工場を訪れた。自分で設計した部品のための材料も自分達の足で商社を探して回り調達した。その中に直径30センチで厚さ20ミリという鉄鋼ディスクが必要だったが30センチの鋼鉄の丸棒すら手に入らないのにそれをたった20ミリだけ売ってくれるところもあるわけもない。工場の指導教官に相談にいくと、鍛造担当の教官のところに連れていってもらい図面を見てもらった。すると「よしわかった」、といってその辺に転がっている細い鉄鋼の丸棒を持ってきてグラインダーで適当な長さに目分量で切断した。

そしておもむろに鍛造用の炉に放り込んで真っ赤に熱した。次の瞬間、それをやっとこでつまみ出して鍛造ハンマーのところへ持っていってガシンガシンとつぶし始めた。みるみるうちに細長い棒は直径30センチで厚さ20ミリのディスクに変身した。

ものの数分の出来事だった。コロンブスの卵的な発想に驚くとともに自分の無知と頭の固さを痛感した。

物作りには発想の柔軟さは不可欠である。柔軟であれば多少の困難でも突破できる道は見いだせる。それにはいろいろな見方や観点からの知見も必要だ。特に今まで出来なかったことを出来るようにするのは今までの延長上ではないことが多い。

それと目分量とはいえ、細い棒をどれだけの長さに切ればつぶした時に所定の直径と厚さのディスクになるかというのが直感でわかってしまうのは名工ならではである。よくシェフとかで手でつかんだだけで重量がぴったり量れているとかいうのを見るが、あれと似たようなものである。

機械工作実習はそういうわけですべての物作りの原点でもあるため、機械工学の学生だけでなく電気工学や化学工学の学生も必修科目だった。彼らはいずれ将来、製品や研究に必要な新しいパーツや治具を製作しなければならない立場になる。その時にどうやって作られるのか作れるのかを知らないと新しいパーツや治具を考案する発想すらも制限される。

実際マイクロ波とかのパーツはほとんど機械工作で出来ているのではないかと思われるほど鉄や導体のかたまりだったりする。重電機器も導体金属のお化けだし。化学の合成装置とかもパイプやお釜にタンクとかガラスケースとかいずれもなんらかの機械工作で作成しなければならない。

いずれも共通するのは高度なものほど高い精度の製造が必要とされるということである。或程度は専用機械で追い込めるが、最後は人間の目と手足で仕上げるしかない。またそれらを測定したり評価するには同じかそれ以上の精度をもった測定装置が必要である。それらを作るのもやはり最後は人間なのである。

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